「すべてはストレートのコントロールの良さ」
初回、タイガースの4番マグリオ・オルドネスが3球目をファウルし、カウントが2ストライク1ボールとなると、フェンウェイ・パークのファンはどこからともなく手をたたき始めた。
メジャーリーグ特有の、三振を期待する手拍子が始まったのだ。
それは瞬く間にフェンウェイ・パーク全体にこだまする拍手となり、マウンド上の
松坂を後押しした。
4球目。見逃せば高めのボール球だったが、オルドネスは勢いのあるストレートにバットを出し、空振り。
ライト・スタンドに夕日が照りつけるフェンウェイ・パークはどっと沸き、1回表が終了した。
「(打者を)追い込んだときに、そういう場面がよくあるんですけど、きょうは結果的に三振を取ることが少なかったですし、それは僕自身もすごく残念でした」
こう言いながらも笑みを浮かべた
松坂はこの試合、1番から9番までどの打者も一発の可能性があるタイガース打線に対し、的を絞らせないピッチングを続けた。
オープン戦から
松坂の球をすべて受けてきているジェイソン・バリテック捕手は試合後、「カッターが良かった。カーブも素晴らしかったし、スライダー、カーブも切れがあって、低めにコントロールすることができた。だけど、すべてはストレートのコントロールの良さで(変化球が)生かされた」と振り返り、
松坂は「基本的にはバリテックの配球を信じて、あまり自分自身で神経質にならないように気を付けています」と、何かをつかんだような表情を浮かべた。
ディフェンスにいいリズムをもたらした投球
球場表示で最速94マイル(約151キロ)。無四球。
しかし、5奪三振は、
松坂にしては少ない感じはするものの、16の内野ゴロを打たせるなど、ディフェンスにいいリズムをもたらした。
特に内野手は守りやすかったのではないだろうか。再三にわたる好プレーで、松坂を盛り上げたダスティン・ペドロイア二塁手は「タイガースのような打線に対しては、ピッチャーをはじめとしたディフェンスがとても大切になってくる。
そういう意味では本当にいいディフェンスだった」と振り返る。
さらにケビン・ユーキリス一塁手は、「スライダー、カッターが良く、ボールは低めに集まっていた。グランダーソンに打たれたホームランは、低めの決して悪い球ではなかった」。
松坂は内野ゴロを打たせようとしたのか
内野ゴロ16
ほぼ毎試合、2けたの内野ゴロを打たせるピッチャーといえば、王建民 (ヤンキース)、ブランドン・ウェブ(ダイヤモンドバックス)、あるいはデレック・ロー(ドジャース)といったシンカーを武器にしたピッチャーを思い浮かべる。
王は昨季、1試合で20の内野ゴロを打たせたことがあるし、ブランドン・ウェブは今季8度の先発で、1試合2けたの内野ゴロを7度(今季の最高は、4月25日に記録したパドレス戦の16個)、ローも今季8度の先発で6度マークしている。
彼らの共通点の一つに、少ない球数で長いイニングを投げられる可能性が高い、ということが挙げられる。
では、
松坂はそこを意識して内野ゴロを打たせようとしたのか。
「特に、ゴロを打たせていこうというか、そういう意識はなかったです。追い込んで三振を取れる場面も何度もありましたし、甘い球が行って、バッターが打ち損じてゴロになるっていうケースも多かったです」
16の内野ゴロの内訳は、ファーストゴロ3、セカンドゴロ3、サードゴロ5、ショートゴロ5、ピッチャーゴロ0。
その半数近くを占めたのは、バットの芯を外させるカッターだった(ちなみに併殺は0)。
ほかの球場なら平凡なフェンス手前のレフトフライが、長打になってしまうフェンウェイ・パークでどういうピッチングをするべきか、この試合、松坂が得たものは大きかったのではないだろうか。
「Let’s go Daisuke」コール
最終回。フェンウェイ・パークに初めて、「Let’s go Daisuke」コールがこだました。
松坂の完投勝利を後押しする声援が、自然発生した感じだった。
「9回、マウンドに上がったときにはすごい力をもらいましたね。僕自身、9回、完投に向けてマウンドに上がることは特別なことではなかったんですけど、(完投は)こっちではなかなか機会の少ないことなので、それだけファンも後押ししてくれたというか、何か特別な気持ちで応援してもらっているのかなって思いました」
初回のオルドネスのときと同様、2死一塁で6番イバン・ロドリゲスを2ストライクと追い込むと、三振を期待する手拍子が起こり、それはすぐさま、大きな拍手へと変わった。
最後は三振ではなく、サードゴロで試合終了。
その直後、勝利のテーマソング「ダーティー・ウォーター」が球場に鳴り響いた。
ところで、
レッドソックスのチケット売り切れ記録が続いている。
この試合、3万6935人の観衆を集め、これで今季17試合連続の売り切れ。
通算では2003年5月15日以来、324試合連続の売り切れとなった。
ちなみに、
メジャー記録はクリーブランド・インディアンスの本拠地ジェイコブス・フィールドの持つ455試合(1995年6月12日〜2001年4月4日)。
フェンウェイ・パークの「満員御礼」がこのまま続けば、08年8月下旬〜9月上旬には新記録達成となる。
松坂には今後、この試合よりももっと大きな拍手が待っているかもしれない。
スポナビより